ハレルヤ! 著:重松清さんの小説感想文です。ネタバレなし。
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~あらすじ~
キヨシローが死んだ。
46歳アカネは、葬儀に参加した時、衝撃を受け昔のバンドメンバー「ショットガン・ホーンズ」のメンバーを訪ねるツアーに!
家庭、仕事。人生の後半戦を生きるメンバーの生き様を。
まず、最初。
というか、この小説の語り手。これは重松清さん本人ではないか。そう感じるナレーションから始まります。
30代前にライターとして独立。ニュータウン系のうだつの上がらないサラリーマンを中心とした小説。主人公は、嫁のアカネ。
あくまでも小説だから、事実はわからないんだけど。小説は、その事実がわからないところが、いい。もしかしたら重松清さんの奥さんは「ショットガン・ホーンズ」のメンバーだったのでは?と思えるとフィクションとノンフィクションの境目が無くなってくれる。そのグラデーションが非常に心地良い作品です。
重松清さんって、そのフィクションとノンフィクションをあいまいにする才能を持っている人だと思います。どの作品も、実際に居てそうでありそうで、物語にどんどん引き込まれていきます。
本編。「重松清さんらしいなあ。」そう感じました。
小説やエッセイなど文章の基本は「起承転結」。
重松清さんの作品は「起承結」「起転結」もしくは「起承転」。
もちろん、ある程度は起承転結なんですけど、どの物語も「大きな解決はしない」のです。
あっさりと終わるわけではない。ただ、ほんのすこーしだけ光が見えて終わる。
事件やなにか問題が起きたりはするんだけど、登場人物を救い切らないんです。
ちょっと光を見せて、自分で立ち上がるのを待つ。
だから、小説が終わった後、読み手は考えさせられるんです。
「きっと、こんな人生をこれから歩んでいるよ」って。
それだけではないです。ひとりひとり登場人物を主役にするんですが、どの人も心情を描写しすぎません。何を考えているのか。表情などは想像できるんですが、書きすぎないから、どの人物の気持ちも、考えられる。僕は小説を二度ほど繰り返し読むんですが、重松清さんの作品は色々な人になりきって考えられるので、新鮮な想いで読めます。
「あのとき、この人物は何を考えていたのだろうか」
「この一言は、こういう気持ちで言っているんだろうな」
だから、非常にリアリティがあるんです。
考える余白を残している。読者の気持ちを、感じ方を大切にしている作者だと思っています。
でもなあ、今、日本で一番泣ける作家という触れ込みはそんなに好きじゃないんだよなあ。
泣ける作品は多いんだけど、なんとなく、泣ける。そんなイメージ。だから、「とにかく泣ける」ではない。それに、いわゆるお涙頂戴!はしていない。
泣ける。泣けるんだけど、多分泣くポイントはひとりひとり、違ってくる。
それだけのグラデーションがある作品。
重松清さんの作品は、心が本のすこーーーしだけ暖かくなります。