わたしは貝になった【コラム】

なんとなく、身体が重たい。疲れているのか。僕自身もわからない。

さてさて、どうしたものか。
身体が重たいと、頭がびっくりするくらい働かない。
なにか大切なことを考えないといけない気がするんだけど、それにしても、なにもわからない。
困ったもんだ。風邪でも引いたのかと思って5回くらい熱を測ってみるけれども、平熱。36.4℃が連続3回表示された時点で、もうその可能性をあきらめることにした。
子どものころはあんなに嬉しかった熱。風邪。おとなになった今は怖くて仕方がない。
できるだけ、健康で生きたい。長生きしたいわけではなく、苦しむことなく生きていたい。

知り合いのおばあちゃんがよく言っていた。
「人間、ピンピンコロリがええよ」って。
もう90歳になるし、健康やんか。
まだまだ長生きできるでしょうに。
そんなことを思いながら、まったく共感できなかった僕をしばきたい。

今なら、なんとなくわかるようになってきた。

ピンピンコロリ。
大きな病気もせず、入院することもなく、ボケる前に、誰かに迷惑かけることなく。
こんな話をすれば、「人は生きているうち迷惑かけるんだから」っていう正論が聞こえてきたりするんだけど、そこは鈴木雅之さんに任せよう。「違う、そうじゃない」

今、すこーしだけわかるようになってきた。

誰かに迷惑かけるというのは、身体的精神的に寄りかかりすぎたくないという意味だ。
自分ができなくなっていくのを地味に感じて、衰えを認めた上で出てくるんだ。

今まで苦もなくやっていたことができなくなって、その劣等感に苦しみたくないということだ。
自分を「情けない」と思いたくない。
その気持ちは、なんとなくとても良くわかる。
そんなことを考えていたら心も重たくなっていく。
昔した会話で、なおかつ僕が主役なわけでもないのに、ずしん、と心の奥に響いてくる。

「あ、今日はもうだめだな」
そう思った。ダメな日だ。ダメな日に頑張ったって、ダメなのだ。早めに自分を諦める。
今日一日サボったところでなにか支障が出るレベルの何かはなかったはず。締切のあるものはないはず。改めてスケジュールを確認し、パンパンに詰まっているグーグルカレンダーを見て軽く吐き気をもよおした。まあいいや。人と会う用事はないし。

とりあえず、サボるかサボらないかを判断するのは、あとの僕に託す!今の僕はもう何もしらん!未来のぼくが困っても、今のぼくにはダメージはない。そんなことよりも、このなんとも言えないしんどさを解消しないと、生きている意味を見いだせない。それどころか、なんとなく生きているのが辛くなるかも知れないレベルだ。もうやだ。なんで自分はこんなんなんだろう。自責というより、自分を責め続ける。
もういいや。朝からサウナに行こう。
そう思い、すべてをほったらかして、受付へ吸い込まれていく。

しかし、そういうときってたいていなにかがおかしくなっている。
サウナに入っていられない。ギリギリまで耐えて水風呂にドボン!したいのに、そんな気持ちになれない。おいおい、スッキリしたいのにどうしたんだよ。
諦めて仮眠室へ。そういえばお腹すいた。というかここ最近一日5食くらい食べてしまっている。なんかいろいろおかしい。こんなに食べて、いったいぼくはどうしたいのだろう。わからない。
わからないから、仮眠室で横になって目をつぶる。

ああ、沈んでいく気がする。どんどん底に沈んでいくんだ。

浮上できるのかわからない。けれどもまずはもうそのまま沈んでいきたい。
誰とも話をしたくないし、なにもしたくない。不安な事は多い。でももう考えることを完全に放棄しねむりに落ちる。
そういうときに限って変な夢をみるもので、ゾンビに襲われた。もう、踏んだり蹴ったりだ。

もし可能ならぼくをピンピンコロリなときに連れて行っておくれ。ゾンビたちよ。
でも、そんな僕も夢の中で必死こいてゾンビから逃げていた。多分、心の最底辺にいるのにも関わらず、逃げていた。夢の中でも死にたくないのか。そうか。

そんなことを思っていたら目が覚めた。
なんとなく、よくわからずスッキリした気持ち。
もう一度、サウナに入ってみる。
長く入って水風呂へダイブする。
頭がどんどんクリアになっていく。

なんとなく、空を見上げる。昼間から入るお風呂は、なんとなく背徳感がある。

やってはいけないことをやっているような。
なんとなくそんな感じ。

おお、いいね、いいね。
その背徳感を感じられるようになったのがそもそも頭がスッキリしてきている証拠だ。

良かった。
そのままサウナの仕事机で仕事を始める。
もう、グーグルカレンダーは僕を気持ち悪くすることがなくなった。
やることたくさんだけど、なんかできる気がする。

そもそも、休んではいけないと思っているのは僕だけかも知れない。
そんなことないのだ。休むときは思い切って休んでしまってよい。

心の中で、その言葉を繰り返してみた。

ちょっとだけ、スキップの一つでもしてみようかな。
帰り道は、ごきげんに変わっていく。

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